
高校生の時にレッスンさせてもらっていたボイストレーナーの安田結衣ちゃん。先月独立されたということでカラオケ店でインタビューさせてもらいました。ボイストレーナーとして大切にしていること、悩み、お金のこと、集客のこと、生徒さんとの関係など語り合ってきました。全6回でお届けします。
#01 もらって嬉しいお金
#02 アメリカでの人体解剖研修
#03 自分のための歌、レッスンは異文化間交流、種まき
#04 生徒と講師は株式会社
#05 救えなかった生徒さん
#06 ビブラート問題
#03 自分のための歌
(渡辺)
レッスンで大切にしてることってある?
(結衣ちゃん)
もっと日常に寄り添った教室にしたいっていうのはありますね。
(渡辺)
おー、日常。どういう思いから?
(結衣ちゃん)
日本ってちょっとまだ歌うことに対する敷居が高いなって思います。自分のためじゃなくて、聞いてもらう人のために歌うっていうイメージが強いかもしれないって思います。
(渡辺)
お付き合いのカラオケで浮かない程度に歌えるようになりたい、って言われてレッスンに来られる方も多いんやけど、そういうことかな?
(結衣ちゃん)
そうですね。自分の内面を発散するためにはヒトカラで、みんなで行くときはその場のノリとか流れとか自分のキャラとか、そういったことを大切にする人が多いのかなって思います。
でもいろんな形があるのがカラオケの良さでもあると思うので、忘年会っていう目的があるならそういう目的に合わせたものでもいいとは思うんです。それとは別に、日常的に自分の言葉をしゃべるような感じで、自分の内面で思ってることなども発散した方がいいと思うんですよ。特に今の時代。

(渡辺)
ほー!時代。それはまたどういう?
(結衣ちゃん)
発散できなくて最終的に爆発してしまうっていう、伝え下手な人が多いですね。私自身がそうやったんです。1人で歌うのは平気なのに、人前で歌うことのハードルはすごく高かったんです。
私がレッスンを受けてた頃、選曲とか声の質とか、先生がいいっていうものに寄せてしまっていたこともあって。だから自分が先生としてレッスンする時には、そういうのはしたくないっていうのがあったんです。よりこう、先生自体が生徒さんの日常に入っていくレッスンっていうのを。(したいという思いがあります。)
(渡辺)
生徒さんの日常に溶け込みたいってこと?
(結衣ちゃん)
はい。だから自分の部屋みたいな雰囲気でやりたいっていうので、ボイストレーニングルームっていう名前をつけたんです。
(渡辺)
そうか、なるほどね~。
(結衣ちゃん)
発表会などあって、人に見られる場を大事にするやり方もあると思うんですけど、自分のために歌う曲もあってもいいんじゃないかなって。
(渡辺)
おー。
(結衣ちゃん)
今度面接があるので自分を励ますためにこの曲を歌いたいんです、とか、就活でいつも聞いてる曲を練習したいんですって言われる生徒さんも多いんです。
(渡辺)
私もそういう曲たくさんあるかも!
(結衣ちゃん)
そうですよね。そういう話を聞くのが嬉しい。
(渡辺)
でもそれってかなり先生のことを信頼してないと無理よね。私やったら相当信頼してないと無理かなー。そんな話を聞かせてもらうって、かなり信頼関係があるってことやから、すごいな~。
(結衣ちゃん)
生徒さんが私のやりたい事についてきてもらうのではなくて、生徒さんからぽんぽん要望など生まれる場になったらいいなと思います。
(渡辺)
そうなるために、どういう風に寄り添ってる?

(結衣ちゃん)
定期的に、「今の声どうですか?」とか「目標ってありますか?」って聞くようにしています。そうすると、昔は第三者の受けを気にしてポピュラーな曲を選んできた人が、今回は自分が一番好きな曲を選んできましたって言われたりして、本当の悩みや本当の目標が出て来るんです。それを知れたら、あとはやれることをやることだけかなと。
(渡辺)
生徒さん自身がそこに気付けるレッスンってすごいな~。
(結衣ちゃん)
特別扱い‥っていうとあんまりいいイメージ無かったりするかも知れないんですけど、けっこう特別扱いしてます。生徒さん一人一人を。
(渡辺)
具体的にどういう?
(結衣ちゃん)
一人一人のカルテをしっかり作って、特徴とか目指して行きたい方向性とか100%見つめます。昔は、こんなんで満足してくれてるんやろうか、っていう思いから、情報をしっかり伝えた方が私は満足感はあったんですけど、生徒さんはその情報量にいっぱいいっぱいになってたり。
(渡辺)
わかるわかるわかる!
(結衣ちゃん)
一個一個習得したいタイプなのか、いっぱい刺激がある方が楽しいのか、そういう情報の処理の仕方も見てあげるのが大事だと思います。
あとは目標ですかね。昔だったら講師主体の目標の立て方やったんですけど、誰かに上手いと言われるために練習してる人ばかりじゃないんですよね。私自身は生徒さんの声ってみんないいと思ってて。みんなそれぞれ好きなんです。そこを尊重したいなと思っています。
(渡辺)
うんうんうん。自分の歌が好きになれたら幸せよね。
(結衣ちゃん)
自分自身の声っていう枠があって、私が教える新しい枠があったとして、それが筋肉の使い方とか違う姿勢の取り方とか、それを体験してもらって、そこから自分の中の新しい枠として増えてもいいし、それはちょっと違うなってなっても正直いいなって思ってて。(笑)
(渡辺)
わかるそれ!(笑)
(結衣ちゃん)
強要するために教えてるわけじゃなくって、異文化間交流じゃないですけど(笑)、ちょっと知ってもらうことで新しい視点が増えたら、それが一番嬉しいです。
異文化間交流と種まき
(渡辺)
いいなー。私もすごく印象に残ってるレッスンがあるんよ。
私が提案する練習メニューをことごとく、ちょっとそれはな~って感じで却下されて(笑)。で、結局そのレッスン時間は、「ちょっとこれやらしてもらっていいですか?」とか「やっぱこっちやらせてもらっていいですか?」っていう感じで、生徒さんがこう試行錯誤するのを見守ってるだけで、その1時間のレッスンで私がしゃべったのって3分くらいやったなっていう(笑)
でもその生徒さんはすごく生き生きされてて楽しそうやったんよ。あー、こういうレッスン時間もあるんやって、驚きつつその生徒さんから学ばせてもらったことがあるんやけど、そういうことかな?
(結衣ちゃん)
そうですよね。必ずしも生徒さんの楽しいっていう気持ちと、先生側のやりきったっていうことと一致しないというか、一致しない方がいいのかもしれないですね。
(渡辺)
うんうん。そう思う。でもそれが、適切な体の使い方ではない事をされてる時もあって、それをどこまでどう言えばいいかなって迷うことは多々あるんやけど‥。
(結衣ちゃん)
少なからず影響は与えられてると思うので。
(渡辺)
おーはいはい!
(結衣ちゃん)
時には生徒さんがその練習方法にピンと来なくても、別の機会に出来るようになってたりとか、好きな曲になってたりするかもしれないなって。種まきのような感じだと思っています。
(渡辺)
あー、種まき‥。
(結衣ちゃん)
その時に芽が出なくても、種を蒔いたことで少しでも気付くきっかけになったら。いつかその練習を大事やなって思ってくれたり、体に向き合うことって大事やなって思ってくれたりするかなって。その時が一番、生徒さんが習得できる時やと思っています。
(渡辺)
時期ってあるよねー。
(結衣ちゃん)
その時期までじっと待ってる感じですかね。(笑)
(渡辺)
待てるのがすごいよねー。私は、時期があるってことに気がつくのに時間がかかったなぁ。
本読んでてもあるやん?その時は、全然意味わからん!って思っても、何年か後に「あ!そういうことか~。」っていうのが。そういうことの大切さに最近私は気づいたかなー。
次回に続く!お楽しみに♪
#01 もらって嬉しいお金
#02 アメリカでの人体解剖研修
#04 生徒と講師は株式会社
#05 救えなかった生徒さん
#06 ビブラート問題